からすとかがし
小川未明
太吉じいさんは、百姓が、かさをかぶって、手に弓を持って立っている、かがしをつくる名人でした。それを見ると、からすやすずめなどが、そばへ寄つきませんでした。
それも、そのはずで、おじいさんは若い時分から弓を射ることが上手で、どんな小さな鳥でも、ねらえば、かならず射落したものです。よく、晩方の空を飛んでいくかりを射落したり、はたけで遊んでいるすずめを射とめたりしました。だからおじいさんを見みると、小鳥たちは鳴くのをやめて、どこへか姿をかくしてしまいました。
しかし、このごろは、おじいさんも目がわるくなって、ねらいがきかなくなりました。けれども、鳥たちは、弓を持って立たっいるかがしを見ると、やはりおじいさんのような、怖しい人ひとだと思ったのです。
青空文庫
芥川龍之介「トロッコ」
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