
仲のわるい姉妹
野口雨情
ある村に、お杉とお紺と云ふ仲の悪い二人の姉妹がありました。お母さんは、二人の仲がよくなるやうにと、いつも、心配をしてをりました。
ある晩方、つひ見たことのない、七八つ位のお芥子坊主が庭へ来て、
姉のお杉 妹のお紺
仲が悪くば 山の神様の
椋鳥さまに お頼みなされ
と、山の方を指さし指さし謡うたつてをりました。お母さんは、不思議に思つて、庭に出て行きますと、お芥子坊主は裏の橋を渡つて逃げて行つてしまひました。お芥子坊主は、その次の晩方も、次の次の晩方も、同じやうに庭へ来て謡ひました。お母さんが出て行くと、いつも橋を渡つて逃げてゆくのでした。
お母さんは、山の神様をおたづねして行けと云ふ意味の唄だと知りました。ある日、二人の姉妹をつれて山の神様をたづねて山へまゐりました。
一番高い山の上まで行きますと、山の神様は、木の根へ腰をかけて、長い真白な髭を撫でながらおゐでになりました。
お母さんと二人の姉妹の顔を見ると、すぐ、山の神様は、
『よしよし、判つた。椋鳥椋鳥』とおつしやつて、とんとんと杖で地面をおたたきになりますと、椋鳥が飛んでまゐりました。
『椋鳥、お前の国へこの姉妹をつれて行くのぢや。』
『かしこまりました』と椋鳥は、二人の姉妹に白い布で目隠しをして、大おほきな椋の木の空洞の前へつれてゆきました。
『この中に一本道があるから、何んにも考へずに、真直に歩いて行くんだよ』と二人の姉妹を空洞の中へいれて入口の戸をガチンと締めてしまひました。
青空文庫
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