「やまなし」 宮沢 賢治作
小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈です。
一、五月
二疋の蟹の子供らが青じろい水の底で話していました。
『クラムボンはわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
『クラムボンは跳てわらったよ』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
上の方や横の方は、青くくらく鋼のように見えます。そのなめらかな天井を、つぶつぶ暗い泡が流れて行きます。
『クラムボンはわらっていたよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
『それならなぜクラムボンはわらったの。』
『知らない。』
つぶつぶ泡が流れて行きます。蟹の子供らもぽつぽつぽつとつづけて五六粒泡を吐きました。それはゆれながら水銀のように光って斜めに上の方へのぼって行きました。

佐藤 愛 Ai Satou
プロフィール
出身地:岩手県
好きなもの
恐竜、キラキラしたもの、お酒、絵本、朝の時間、ハープ、日本庭園巡り、キジバトの声、射的、ストーリーテリング、友達とお茶などなど。
はじめまして。
「早く帰りたいな~」と思いながらも、何やかんやで毎日、楽しくOLやってます(笑)
朗読、楽しんでもらえたらうれしいです。
朗読カフェのおかげで、青空文庫が身近なものになりました。
これからも、よろしくお願いします。
芥川龍之介「トロッコ」
夢十夜第十夜
宮沢賢治「ざしき童子のはなし」
芥川龍之介「蜜柑」
夢十夜第二夜
新美南吉「花のき村と盗人たち」
夢十夜第三夜
小川未明「からすとかがし」
夢十夜第九夜
夢十夜第七夜
銀河鉄道の夜
夢十夜第四夜