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鈴木ちひろプロフィール

蜘蛛の糸

芥川龍之介


目次

 ある日の事でございます。御釈迦様さまは極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色の蕊からは、何とも云えない好匂においが、絶間なくあたりへ溢れて居ります。極楽は丁度朝なのでございましょう。
 やがて御釈迦様はその池のふちに御佇ずみになって、水の面を蔽っている蓮の葉の間から、ふと下の容子を御覧になりました。この極楽の蓮池の下は、丁度地獄の底に当って居りますから、水晶のような水を透き徹して、三途の河や針の山の景色が、丁度覗眼鏡を見るように、はっきりと見えるのでございます。
LinkIcon 青空文庫より

更新順です

2021-12-05

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2021-12-05

Nao