赤とんぼ
新美南吉
赤とんぼは、三回ほど空をまわって、いつも休む一本の垣根の竹の上に、チョイととまりました。
山里の昼は静かです。
そして、初夏の山里は、真実に緑につつまれています。
赤とんぼは、クルリと眼玉を転じました。
赤とんぼの休んでいる竹には、朝顔のつるがまきついています。昨年の夏、この別荘の主人が植うえていった朝顔の結んだ実が、また生
は
えたんだろう――と赤とんぼは思いました。
今はこの家には誰もいないので、雨戸が淋しくしまっています。
赤とんぼは、ツイと竹の先からからだを離して、高い空に舞い上がりました。
三四人の人が、こっちへやって来ます。
赤とんぼは、さっきの竹にまたとまって、じっと近づいて来る人々を見ていました。
一番最初にかけて来たのは、赤いリボンの帽子
青空文庫
吉田 美穂子
声優、ナレーター
2 . 24 tokyo
好きな作家、宮沢賢治、川上弘美。
声をつかったお仕事で生計を立てています。
穏やかな物語が好き。
クレイジーボックス所属
芥川龍之介「トロッコ」
夢十夜第十夜
宮沢賢治「ざしき童子のはなし」
芥川龍之介「蜜柑」
夢十夜第二夜
新美南吉「花のき村と盗人たち」
夢十夜第三夜
小川未明「からすとかがし」
夢十夜第九夜
夢十夜第七夜
銀河鉄道の夜
夢十夜第四夜